[ナラティヴ・セラピー]2018年David Epston来日ワークショップ開催決定!

日本でのナラティヴ・セラピーを一(いち)から思い描いてみる

〜質問をするという行為における「型」と、
守破離の心得〜

【ワークショップの日時場所等の詳細について】

日時 2018年10月6,7,8日(土日祝)10時〜17時(途中休憩あり)
場所 TKP大阪難波カンファレンスセンター (8A会議室)
講師 David Epston、石河澄江(アシスタント兼通訳)
定員 100名程度
料金 (早割)40,000円/(一般)50,000円(3日間)
*ワークショップの性質上、2日間以上ご参加ください。
申込期間 2018年7月28日(土)〜定員が来次第締切予定。(早割期間〜831()まで)

お申込み:https://ws.formzu.net/fgen/S80045162/

【講師】
David Epston(デイヴィッド・エプストン)
Michael White(マイケル・ホワイト)の盟友でナラティヴ・セラピーを創始した。「物語としての家族(共著,1990 小森訳, 2017)以来、著書も多数で世界で教えている。最近の共著書に「Narrative therapy in Wonderland: Connecting with Children’s Imaginative Know-how(2017)」などがある。2017年3月に初来日ワークショップ(東京渋谷)を行い今回2回目の来日。

石河澄江(Sumie Ishikawa)
 福岡県北九州市で生まれ育つ。カナダで、ソーシャルワーカー・カウンセラーとして働きながら、社会の排除構造の中で繰り返し排除される人たちを支援する中で、「これ以上希望がすり減らない関わり方はないのだろうか」と疑問を抱き始めていた最中に、ナラティヴ・セラピーと出会い心惹かれる。Victoria大学にてポストモダン・ソーシャルワークを学び、Melbourne大学の大学院にてナラティヴ・セラピーを学ぶ。12年間のカナダ生活を経た後、2015年に北九州へ戻り、自身のカウンセリングルーム、心療内科、NPO団体などでナラティヴ・セラピーの実践を続けている。

【David Epston先生からのメッセージ】
「私たちは、理論によって見立てることからではなく、質問するということから取りかかっていきます。(中略)まず当事者の興味関心を惹きつけ、次に当事者の好奇心を刺激すれば、その人は自身の人生に魅了される事でしょう」(2004年9月)これは、マイケル・ホワイトの言葉です。ある人は、ナラティヴ・セラピーのインタビューの事を「まるで相手のもつ魔法の力を発見して引き出すかのようだ」と表現してくれました。既に1989年の時点で、このような質問アプローチがナラティヴ・セラピーに不可欠であるという認識は広まりつつありましたが、当時のマイケルは早くも、ナラティヴ・セラピーは「文学的価値のあるセラピー」とも言えるのではないかと考えていました。これは最近(2017年)、私がナラティヴ・セラピー実践における「詩(的要素)と美の追求」と言い表したものにも通じるかと思います(Epston, D.)。

ナラティヴ・セラピーの実践力を身に付けるにあたって、私が皆さんに大切にしてほしい要素は、どうやら古くから日本にある知恵にも通じるようです。

:質問づくりの基盤となる「型」を徹底的に身に付ける。
:学んだ「型」以外の要素も取り入れながら試行錯誤を繰り返し、「質問をする」という行為に纏わる「知恵・技術・こころ」に更に磨きをかける。
:「守」・「破」を極めてこそ初めて「型」から離れ、その場で自然と生まれたアイデア・直観・心の動きに呼応した独自性も体現する。

今回のワークショップでは、実例・実演を通して、これらの要素を皆さんに感じて頂き、その都度丁寧な説明を加えていきたいと思っています。

また、「質問をする」という行為を通して『詩と美を追求』するとは一体何を意味するのかというテーマを、少しでもわかりやすく伝えるために、今回は、私の逐語録に加えて、日本人ナラティヴ・セラピストSumie[i]の逐語録も使って、丁寧な逐語検討を行うことにしました。Sumieの逐語録は、現実に日本で起こっている問題や会話を題材としているので、日本語で表現されたナラティヴ・セラピーの心意気をより身近に感じてもらえるのではないかと思います。また、Sumieの逐語録の検討では、もしも私がこの瞬間のSumieの立場に置かれたら、、、と想定して(これはカナダで生まれ育ちニュージーランドで長年生活してきた私には体験しえない状況です!)私も質問を考えます。私のなかに流れるナラティヴの調べやリズムが、多様な質問たちをダンスに誘い出していく光景を一緒に楽しんでいただくことで、あなたのなかに流れるナラティヴが漏れ聞こえ、鳴り響いていくきっかけになればと願っています。

今世界中で、ナラティヴ・セラピストとして成長しつつある人たちの実践が、ナラティヴ・セラピーとして「正しい/間違っている」という二項対立の視点から判断・評価されてしまう現象が蔓延しつつあります。そこで、今回のワークショップでは、日本の実践者たちが同じ轍を踏み続けないための対抗策を投じたいという思いから、ひとつの会話に対して、あえて、私(David)バージョンとSumieバージョンの質問を並列させることにしました。ナラティヴ・セラピーの誕生に関わった私の質問も、私に比べて経験が浅いとも見られかねないSumieの質問も、クライアントにどう響くのかという点では、優劣つけようのない価値があるはずです。直線的な物差しでは測ることのできない、ナラティヴ・セラピー実践の多様性と無限の可能性を、皆さんと一緒に探求したいと思います。私は、何よりも、日本でのナラティヴ・セラピー実践が今後、日本特有の言語や文化に根差した形で、その多様さを祝福しながら発展していくことを願っています。

このワークショップの内容は、私とSumie、そして、快く相談に応じてくれた数多くの協力者との共同作業によって生まれました。そこには私たちの多様なアイデアや視点が凝縮されています。なぜ、私がこのような共同作業に拘るかというと、ナラティヴ・セラピーは、英米で生まれ育ち、英米特有の言語や文化に根差しているにも関わらず、その事実に十分な注意が向けられないまま、他文化圏へと「輸出」されるようになってしまったからです。このような現状に対抗するため、私は現在、アメリカ在住のコロンビア人ナラティヴ・セラピストMarcela Polancoと共に「南アメリカでのナラティヴ・セラピーを一(いち)から思い描いてみる」というプロジェクトに取り組んでいます。

私が今Sumieと一緒に取り組んでいるプロジェクトはその第2弾にあたり、このワークショップも志を同じくしています。Sumieは、英米文化の中でナラティヴ・セラピーを学び実践を重ねた文化的・言語的バイリンガルであると同時に、「西洋化」が非西洋人に植え付けうる特殊な感覚や文化的習慣についても鋭い観点を持ち合わせています。日本で今後、彼女や日本のナラティヴ・セラピー実践者たちが共に力を合わせて、この大プロジェクトに実りをもたらしてくれることを大いに期待しています。

今後の日本で、Marcelaの言う『知識の輸入の「フェアトレード」化』――輸出する側の言語や文化に対してではなく、輸入する側の言語や文化に忠実に、外来の知識を取り入れること――を実現していくには、日本の地に根差したナラティヴ・セラピーの「知恵と技術と心」が必要となってくることでしょう。皆さんの根っこの部分に繋がったところから、日本のナラティヴ・セラピーが「改めて/新ためて」紡がれてゆくことを心から願い、今回のワークショップを心待ちにしています。
<共同翻訳:石河澄江、長田誠司>